排水の中和処理とは?仕組みと中和装置の選び方をわかりやすく解説 水処理

排水の中和処理とは?仕組みと中和装置の選び方をわかりやすく解説
工場や病院などから発生する排水には、酸性やアルカリ性に偏ったものがあります。
こうした排水は、そのまま放流せず、pHを適切な範囲に調整する「中和処理」が必要です。
この記事では、中和の仕組みや必要な理由、中和装置の構成と選び方を解説します。
① 中和とは?排水処理における中和の基本
中和とは、酸性またはアルカリ性に偏った排水のpHを調整し、適切な範囲に近づける処理です。
pHは液体の酸性・アルカリ性の度合いを示す数値で、一般的に以下のように表されます。
- 🟢 pH7付近:中性
- 🔵 pH7より小さい:酸性
- 🔴 pH7より大きい:アルカリ性

工場などから発生する排水は、使用する薬品や工程によってpHが大きく変化するため、放流前に中和処理を行います。
排水の中和が必要な主な理由は2つあります。
①排水基準を満たすため
事業所から公共用水域や下水道へ排水を放流する場合、水質汚濁防止法や下水道法、および各自治体が定める条例・基準を満たす必要があります。
🌊公共用水域への放流
水質汚濁防止法に基づく排水基準では、pH5.8〜8.6(海域以外)が目安とされています。
🚰下水道への放流
下水道法施行令などに基づき、自治体ごとに下水道条例で基準値が定められています。
pHの基準は放流先や地域、業種によって異なるため、実際の設計や設備選定の際は、放流先の基準や自治体の条例を必ず確認することが重要です。
②設備や環境への影響を抑えるため
強い酸性・アルカリ性の排水は、配管や設備の腐食・劣化につながる可能性があります。また、水域に流入した場合は、水生生物や周辺環境へ影響を与えるおそれもあります。
② 排水処理における中和の仕組み
排水処理における中和とは、排水のpH(酸性・アルカリ性の度合い)を法律の規制(放流基準)や後続の処理に適した「中性」の範囲に調整する工程です。
中和処理では、排水のpHに応じて酸またはアルカリを添加します。
中和剤は排水の性状や求める処理速度によって使い分けます。
| 中和剤 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| 苛性ソーダ(NaOH) | 酸性排水の中和 | 反応が速く扱いやすいが腐食性が高い |
| 消石灰(Ca(OH)₂) | 酸性排水の中和 | コストが低いがスラッジが発生しやすい |
| 塩酸(HCl) | アルカリ性排水の中和 | 塩化水素ガスの発生、発熱に注意 |
| 硫酸(H₂SO₄) | アルカリ性排水の中和 | 比較的安価だが腐食性・発熱に注意 |
pHを測定しながら自動で薬液を添加する
実際の排水では、常に同じpHの排水が流れてくるとは限りません。
生産量や使用する薬品、工程の変化などによって、排水量やpHが変動することがあります。
そこで使用されるのが中和装置です。
中和装置では、pH計によって排水のpHをリアルタイムで測定し、その測定値に応じて薬注ポンプを制御します。
例えば、以下のような流れで中和処理を行います。
人が手作業で薬品を投入するのではなく、測定と薬液添加を連動させることで、より安定したpH管理を目指します。
③ 中和装置の基本構成
中和装置は、主に以下の機器で構成されます。
①原水槽
原水槽は、工場から出た排水を「いったん貯めておくタンク」です。 工場の排水は、流れる量や性質が常に同じとは限りません。作業内容によって、酸性の強い排水やアルカリ性の強い排水が出ることもあります。 こうした排水をそのまま中和しようとすると、薬品の量をうまく調整できないことがあります。
そこで役立つのが原水槽です。排水をいったん原水槽に貯めると、いろいろな排水が混ざり合い、量も性質も落ち着いた状態になります。 こうして落ち着いた排水を少しずつ中和処理槽へ送ることで、薬品の量を調整しやすくなり、安定して中和処理を行えます。
②中和処理槽
中和処理槽は、排水に薬品を加えてpHを調整する、中和装置の中心となる槽です。 槽内にはpH電極が設置されており、排水のpH値を常に測定しています。その測定値をもとに制御盤が薬注ポンプを動かし、必要な量の中和剤を自動で注入します。
注入された薬品は撹拌機で均一に混ぜ合わせられ、十分な反応時間を経て、排水のpH値を放流基準内に整えます。
③pH計
pH計は、排水のpHをリアルタイムで測定するための機器です。
④薬注ポンプ
pHの測定値に応じて、酸やアルカリなどの中和剤を添加します。
⑤撹拌機
排水と中和剤を均一に混合し、pHの偏りを抑えます。
⑥制御盤
制御盤では、pHの目標値や制御条件を設定し、pH計や薬注ポンプなどを連動させます。
⑦記録計
記録計は、pH計で測ったpHの値を時間の経過とともに記録し、保存しておくための機器です。 排水のpHは、法令や自治体の基準によって放流できる範囲が決められています。記録計に残したデータは、「基準を守って排水していた」ことを示す大切な証拠になります。
排水の状態に応じて薬液の添加を自動制御することで、安定した中和処理を行います。
中和装置は、これらの機器を単体で選ぶだけでなく、排水の性状や処理量に合わせて全体を設計することが重要です。
④ 中和装置の選び方・設計のポイント
中和装置の仕様は、原水の性状・流量・処理目標・設置環境で決まります。
設計時に確認する主なポイントは次の8つです。
1. 処理目的と目標pH
放流か再利用かを決め、放流先の基準(下水道はpH5を超え9未満、河川は5.8〜8.6など)に余裕を持たせて目標pHを設定します。
2. 原水の性状
組成によって必要な薬品量が変わります。pHの変動範囲、温度(高温なら樹脂製の槽に注意)、SS濃度(電極の汚れや詰まりの原因)もあわせて確認します。
3. 処理流量
装置の能力は、日量(m³/日)よりも時間あたりの最大流量(m³/hr)で決まります。排水が短時間に集中する場合は、調整槽で平準化します。
4. pH調整剤
酸性の原水には苛性ソーダや消石灰アルカリ性には「硫酸」または「炭酸ガス(二酸化炭素)」を基本とし、塩酸は特殊な事情がある場合のみとします。
5. 制御方式
原水が酸性かアルカリ性の一方だけなら片側一点制御、両方に振れるなら両側制御を選びます。
pH変動が激しい場合は、中和槽を2つに分ける『2段中和』を検討します。
6. バッチ式と連続式
排水量が少なく間欠的な場合や、pH変動が大きい場合や濃排水の場合はバッチ式が向いています。排水量が多く、pHの変動が比較的緩やかな場合は連続式が向いています。
7. 槽の材質
薬品槽・中和槽・放流槽は、接する液体の種類(酸・アルカリ)と温度に合わせて適切に選定します(例:酸性にはPEやPVC+FRP補強、アルカリ性にはSUSなど)。
8. 設置場所・電源
屋外設置では凍結対策や紫外線対策(遮光)、屋内設置では薬品の揮発に対する換気が必要です。電源の周波数(50Hz/60Hz)と電圧、制御盤の材質(屋外や腐食環境ではSUS、屋内では鋼板など)も確認します。
⑤ まとめ|中和装置の選定・設計は使用条件に合わせた検討が重要
中和装置は、排水量やpHだけでなく、排水の性状、流量の変動、使用する中和剤、処理方式、設置環境など、さまざまな条件を考慮して選定・設計する必要があります。
「どのくらいの容量が必要かわからない」
「バッチ式と連続式のどちらが適しているかわからない」
「現在の設備に合う中和装置を検討したい」
といった場合も、まずはお気軽にご相談ください。
弊社では、排水の条件や設置環境を確認し、中和装置だけでなく、pH計・薬注ポンプ・撹拌機・タンクなどを含めた設備構成をご提案しています。












