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ORP(酸化還元電位)とは?基礎知識・pHとの違い・活用法まで解説 水処理

ORP(酸化還元電位)とは、水処理設備における水質や酸化・還元状態を把握するための指標の一つです。

ORP計を適切に活用するには、ORPの意味だけでなく、pHとの違いや測定原理、測定値の見方を理解しておくことが重要です。

特に、人手不足が続く中小企業では、設備の状態を適切に把握しながら、限られた人員で安定した運用を行うことが課題となっています。

この記事では、ORPとは何かという基礎知識から、pHとの違い、ORP計の仕組みや測定方法、水処理設備における活用法までをご紹介いたします。

①【基礎知識】ORP(酸化還元電位)とは?

まずは、ORP(酸化還元電位)の基礎知識を押さえましょう。

ORPの基本的な意味と定義

酸化と還元とは?

水処理や設備管理の分野では、物質が電子を失う反応を「酸化」、電子を受け取る反応を「還元」と呼びます。 たとえば、鉄が錆びる現象や、酸素などによって有機物が酸化・分解される反応は、酸化反応の一例です。

一方、還元剤を用いて対象物質を別の化学形態に変化させる処理や、金属イオンが電子を受け取って金属として析出する反応などには、還元反応が関係します。

ORP=「その水溶液が酸化しやすいか、還元しやすいか」のエネルギーバランス

ORP(Oxidation-Reduction Potential:酸化還元電位)とは、水溶液がどの程度酸化または還元しやすい状態にあるかを、電位(mV)で表した指標です。

一般に、酸化性が強い状態ではORPは高くなり、還元性が強い状態では低くなる傾向があります。ただし、ORPは溶液中の酸化体・還元体の種類や濃度、pH、温度などさまざまな要因の影響を受けます。

ORPを測定することで、水溶液の酸化・還元状態を把握し、水処理工程の状態監視や制御に役立てることができます。

ORPの単位(mV:ミリボルト)の読み方と解釈

ORPの測定値は一般に「mV」で表され、「ミリボルト」と読みます。

測定値がプラス(+mV)を示すときの水質・化学的状態

ORPがプラス方向に高いほど酸化性が強く、反対にマイナス方向に低いほど還元性が強い状態を示す傾向があります。 たとえば、塩素やオゾンなどの酸化剤(殺菌剤)が存在する水や、酸化的な環境にある水では、ORPが比較的高い値を示すことがあります。

ただし、ORPは酸化剤の濃度だけでなく、pHや温度、溶液中に存在する酸化体・還元体などの影響を受けるため、測定値だけで水質や殺菌効果を判断することはできません。必ず他の指数とあわせて管理する必要があります。

測定値がマイナス(-mV)を示すときの水質・化学的状態

反対に、ORPがマイナス方向に低くなるほど、一般にその水溶液は還元性が強い状態を示します。

たとえば、酸素が少なく還元的な状態にある環境や、還元剤(チオ硫酸ナトリウム等)が添加された水溶液ではORPが低くなり、条件によってはマイナス値を示すことがあります。

【一覧表】ORP値(プラスとマイナス)が示す水質状態の目安

ORP値(プラスとマイナス)が示す水質状態の目安を表にまとめました。

ORP値の目安 (mV) 水質・化学状態の傾向 主な該当水質・環境の例
+600mV〜+900mV 極めて強い酸化状態 オゾン水、高濃度塩素殺菌水、めっき廃水のシアン分解工程
+300mV〜+500mV 酸化傾向・綺麗な環境 水道水、雨水、良好な好気性生物処理水、プール水
-100mV〜+200mV 弱い酸化〜還元への移行 地下水、一般的な淡水養殖水、軽度汚濁水
-300mV〜-100mV 還元状態(酸素欠乏) 嫌気性消化槽(メタン発酵)、脱窒工程の生物処理槽
-500mV〜-300mV 極めて強い還元状態 硫化水素が発生する高度腐敗排水、めっき廃水のクロム還元工程

②ORPとpHの違い

水質管理においてよく用いられる指標として「pH」と「ORP」があり、それぞれが表している水質の性質は異なります。

pHは、水素イオンの状態をもとに、水溶液が「酸性」「中性」「アルカリ性」のどの状態にあるか、その程度を表す指標です。

一方、ORPは水溶液の酸化・還元状態を電位として表す指標で、一般にORPが高いほど酸化性が強く、低いほど還元性が強い状態を示す傾向があります。

たとえば、同じpH付近の水溶液であっても、塩素などの酸化剤が含まれているかどうかでORPの値は大きく異なります。pH計だけでは酸性・アルカリ性の状態を把握できますが、それだけでは殺菌力や反応の進行度といった「酸化・還元状態」までを把握することはできません。

pHとORPをそれぞれ測定することで、水処理工程における水質や酸化還元状態の変化をより多面的に監視できます。

③ORP測定器の構造と基本的な測定原理

ここからは、ORP測定器について解説します。まずは、構造や基本的な原理を押さえておきましょう。

金属電極と比較電極による電位差測定のメカニズム

ORP計は、水溶液に接する「指示電極(測定電極)」と、基準となる「比較電極(参照電極)」との間に生じる電位差を測定する装置です。

指示電極には一般に白金などの金属が用いられます。 電極表面では、水溶液中に存在する酸化体・還元体との間で電子の授受が起こり、その酸化還元状態に応じた電位が生じます。

この指示電極の電位を、安定した基準電位を示す比較電極と比較し、その電位差をmV(ミリボルト)単位で測定するのがORP測定の基本的な仕組みです。

ORP電極の構造と主要パーツの役割

金属電極(白金・金電極など)と電子の受渡し

ORPの指示電極には、測定対象液との反応性が低く、酸化還元反応に対して安定した電位を得やすい貴金属が用いられます。代表的な電極材料が白金(プラチナ)です。

一方、測定対象液の組成によっては白金電極が適さない場合があり、金(ゴールド)電極が選択されることもあります。

たとえば、シアン化合物を含む溶液(めっき排水など)では白金だと電極自体が溶解・劣化してしまうため、金電極が使用されます。

このように、電極材料を選定する際は、測定対象液の成分や使用条件を確認することが重要です。

比較電極(参照電極)と内部液(塩化カリウムなど)の役割

比較電極(参照電極)は、ORP測定の基準となる安定した電位を示す役割を担います。一般的な比較電極では、内部に一定濃度の塩化カリウム(KCl)溶液などが用いられ、セラミックなどで構成された液絡部を介して試料水と電気的に接続されています。

比較電極が安定した基準電位を示すことで、指示電極に生じる電位を比較電極との電位差として測定できます。

標準電極電位(SHE)と銀/塩化銀電極(Ag/AgCl)による測定値換算

電気化学分野では、電極電位を標準水素電極(SHE:Standard Hydrogen Electrode)の電位を0 mVとして表すことがあります。

一方、実際の工業用ORP計では、取扱いや保守のしやすさなどから、銀/塩化銀(Ag/AgCl)系の比較電極が広く用いられています。 銀/塩化銀電極はSHEに対して一定の電位差を持っており、その値は内部液のKCl濃度や温度などによって異なります。 25℃付近(3.33mol/L KCL内部液など)では条件によって約+200 mV前後となります。

このため、ORP値を文献値などと比較する際には、どの比較電極を基準とした値なのかを確認することが重要です。Ag/AgCl基準の測定値をSHE基準へ換算する場合は、使用している比較電極のSHEに対する電位を測定値に加えて換算します。具体的な補正値は、比較電極の種類、内部液濃度、温度などを確認して決定する必要があります。

④水質管理におけるORPの主要な活用法

ORPが水質管理に活用されている主な例をご紹介します。

工場排水・薬液注入コントロールでの活用法

工業排水処理では、酸化・還元反応を利用して対象物質を処理する工程があり、その状態監視や薬品注入制御にORP計が活用されています。 たとえば、めっき工場などから排出されるシアン化物を含む排水では、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を添加して酸化・分解する処理方法があります。 このような処理ではORPを連続測定し、酸化還元状態を監視しながら薬品の注入量を制御する方法が用いられます。

また、六価クロムを含む排水では、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を添加し、六価クロムを三価クロムへ還元する処理が行われる場合があります。 この工程でもORPを監視し、所定の管理値を目安として還元剤の注入を制御する方法があります。

ORPを利用した薬品注入制御は、処理状態に応じて薬品量を調整することで、過剰注入の抑制(コスト削減)や処理状態の安定化に役立ちます。 ただし、適切なORP管理値は対象物質、pH、薬品、使用する比較電極、設備条件などによって異なるため、実際の運用条件に応じて設定することが重要です。

半導体・超純水製造プロセスにおける酸化環境の常時モニタリング

半導体や精密電子部品の製造に用いられる超純水では、用途に応じてさまざまな水質項目が管理されています。 ORPはその中でも、水の酸化還元状態をリアルタイムに把握するための重要な指標です。

たとえば、オゾンや過酸化水素などの酸化剤を使用する水処理工程では、酸化剤の添加や除去に伴って水の酸化還元状態が変化します。 こうした工程でORPを連続測定することで、酸化還元状態の変化を監視し、設備の運転管理に役立てることができます。

※ORPは特定の酸化剤濃度や有機物、微生物などを直接、測定するものではないため、必要に応じて他の水質指標と組み合わせて管理することが重要です。

食品・飲料工場や温浴施設における衛生管理の徹底

食品・飲料の製造工程や、プールなどの衛生管理においても、殺菌効果の指数としてORPが利用されることがあります。

たとえば、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系薬剤を使用する殺菌処理では、pHの変動によって殺菌力の高い「次亜塩素酸(HOCl)」と殺菌力の低い「次亜塩素酸イオン(OCl-[1.1])」の存在割合が変化します。そのため、同じ残留塩素濃度でも殺菌効果が異なる場合があります。

ここでORPを測定すれば、実際の殺菌力を反映した「水の酸化状態」を連続監視できるため、より確実な衛生管理や薬品注入コントロールが可能になります。

※ORPは残留塩素濃度や殺菌効果そのものを直接測定する指標ではないため、衛生管理では、pHや残留塩素濃度など用途に応じた管理項目と併用して判断することが重要です。

農業(養液栽培)・水産業・養魚場での水環境管理への応用

陸上養殖などの水質管理においても、用途に応じてORPが利用されることがあります。

たとえば、養殖池や水槽に残餌や排泄物などの有機物が蓄積すると、微生物による分解の過程で酸素が大量に消費され、水質が低酸素・嫌気的環境へと移行します。このとき、水環境は還元的な状態となり、ORP値が著しく低下します。 ORPを継続的に測定することで、水中の酸化還元状態の変化を把握し、水質管理の判断材料として活用できます。

※ORPは硫化水素などの特定物質を直接測定するものではないため、実際の水質管理では、溶存酸素(DO)やpH、水温など、目的に応じた水質項目と組み合わせて総合的に状態を確認することが重要です。

⑤まとめ|ORPの基礎を正しく理解し、高精度な水質管理を実践しよう

ORP(酸化還元電位)は、水溶液の酸化・還元状態を電位として把握するための水質指標です。

pHとの違いや測定原理を正しく理解し、工場排水処理における薬品注入制御や水質管理などに活用することで、設備運用の安定化や薬品の過剰注入抑制に役立てることができます。

また、ORPを連続測定して設備制御に活用すれば、作業者による測定・監視の負担軽減にもつながります。

水処理設備の省力化や安定した運用を検討している場合は、測定対象や使用環境、必要な制御機能などを確認した上で、用途に適したORP計を選定することが重要です。

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