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【図解でわかる】ろ過器の基本!「砂ろ過」と「カートリッジ式」は何が違う? その他

はじめに

水処理の現場において、不純物を取り除き、清浄な水を得るために不可欠なのが「ろ過器」です。
しかし、その種類は多岐にわたり、それぞれ異なる原理と特徴を持っています。特に「砂ろ過」と「カートリッジ式ろ過」は、産業用途から身近な水処理まで幅広く利用されています。

本記事では、これら二つの主要なろ過方式について、その基本原理、メリット・デメリット、そしてどのような場合にどちらの方式が適しているのかを、図解を交えながら詳しく解説します。自社の水処理ニーズに最適なろ過器を選ぶための「教科書」として、ぜひご活用ください。

砂ろ過の基本

砂ろ過の原理

砂ろ過装置は、一般的にろ過槽の底部に粗い砂利層、その上に細かい砂層を積み重ねた構造をしています。原水は上部からろ過槽に供給され、砂層を通過する際に、水中の不純物が砂の隙間に捕捉されます。このろ過のメカニズムには、主に以下の要素が関与しています。

  • 物理的捕捉(ふるい効果): 砂の粒子の隙間よりも大きな不純物は、物理的に捕捉されます。
  • 吸着: 砂の表面に不純物が吸着することで除去されます。
  • 生物学的分解: 緩速ろ過の場合、砂層の表面に形成される生物膜(生物ろ過膜)が、有機物などを分解・除去する役割を果たします。

砂ろ過には、主に「急速ろ過」と「緩速ろ過」の二つの方式があります。急速ろ過はろ過速度が速く、大規模な水処理施設で広く用いられます。一方、緩速ろ過はろ過速度が遅いものの、生物学的分解能力が高く、より清浄な水を得られる特徴があります。

砂ろ過のメリット・デメリット

メリット:

  • 処理能力: 大量の水を一度に処理できるため、大規模な水処理に適しています。
  • コスト効率: ろ材である砂は比較的安価であり、長期的な運用コストを抑えられます。
  • 耐久性: ろ材の寿命が長く、適切に管理すれば長期間使用できます。
  • 安定性: ろ過層が安定していれば、比較的安定した水質が得られます。

デメリット:

  • 設置スペース: ろ過槽が大きくなるため、広い設置スペースが必要です。
  • 初期費用: 装置の規模によっては、初期投資が高くなる場合があります。
  • 逆洗: ろ材の目詰まりを防ぐために、定期的な逆洗が必要です。
  • ろ過精度: 微細な粒子や溶解性の物質の除去には限界があります。

砂ろ過の仕組み(図解)


砂ろ過の図解

カートリッジ式ろ過の基本

カートリッジ式ろ過の原理

カートリッジ式ろ過装置は、ハウジング(容器)内に筒状のカートリッジフィルターをセットし、原水をフィルター内部または外部から通過させることで、不純物を捕捉します。カートリッジフィルターは、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどの繊維を巻き付けたり、プリーツ状に加工したりして作られており、その素材や構造によってろ過精度や耐薬品性などが異なります。

不純物の除去は、主に以下のメカニズムによって行われます。

 

  • 物理的捕捉(ふるい効果): フィルターの孔径よりも大きな不純物が捕捉されます。
  • 吸着: フィルター素材の表面に不純物が吸着することで除去されます。

 

フィルターの孔径(ミクロン単位で表示されることが多い)が小さいほど、より微細な不純物を除去できます。使用済みのカートリッジフィルターは、洗浄して再利用できるタイプもありますが、多くは使い捨てとなります。



カートリッジ式ろ過のメリット・デメリット

メリット:

  • 省スペース: 装置がコンパクトであり、設置スペースをあまり必要としません。
  • 高いろ過精度: フィルターの孔径を選ぶことで、微細な粒子まで除去できます。
  • メンテナンス性: カートリッジの交換が容易であり、メンテナンス作業が比較的簡単です。
  • 多様な用途: フィルターの種類が豊富であり、様々な水質や用途に対応できます。

デメリット:

  • ランニングコスト: カートリッジフィルターは消耗品であり、定期的な交換が必要です。
  • 処理能力: 大量の水を連続して処理するのには不向きな場合があります。
  • 目詰まり: 不純物濃度が高い原水の場合、フィルターが短期間で目詰まりする可能性があります。

カートリッジ式ろ過器の仕組み(図解)


カートリッジの図解

砂ろ過とカートリッジ式ろ過の比較

項目 砂ろ過 カートリッジ式ろ過
ろ材 砂、砂利 ポリプロピレン、ポリエステルなどの繊維フィルター
ろ過原理 物理的捕捉、吸着、生物学的分解(緩速ろ過) 物理的捕捉、吸着
ろ過精度 比較的粗い(数十μm程度) 高い(0.1μm~数百μmまで選択可能)
処理量 大規模処理に適している 比較的小規模処理に適している
設置スペース 広いスペースが必要 コンパクトで省スペース
ランニングコスト ろ材交換は費用が発生するが安価 カートリッジ交換費用が発生
メンテナンス 定期的な逆洗、ろ材交換は稀 定期的なカートリッジ交換
用途例 上下水道、工場排水処理、プール、温浴施設 純水製造前処理、飲料水、薬品、食品、研究室


自社にあうのはどっち?選び方のポイント

砂ろ過とカートリッジ式ろ過のどちらを選ぶべきかは、以下の要素を総合的に考慮して判断する必要があります。


  1. 処理したい水の量(処理能力): 大量の水を連続して処理する必要がある場合は、砂ろ過が適しています。一方、比較的小量の水や、特定の工程でのポイント使用であれば、カートリッジ式ろ過が有利です。
  2. 除去したい不純物の種類とろ過精度: 濁度や大きな浮遊物質の除去が主目的であれば、砂ろ過で十分な場合があります。しかし、より微細な粒子や特定の不純物を高精度で除去したい場合は、カートリッジ式ろ過が適しています。特に、後段に精密ろ過や膜処理(RO膜など)を控えている場合の前処理としては、カートリッジ式ろ過が選ばれることが多いです。
  3. 設置スペース: 設置できるスペースに限りがある場合は、コンパクトなカートリッジ式ろ過が現実的な選択肢となります。
  4. 初期費用とランニングコスト: 初期投資を抑えたいのか、それとも長期的なランニングコストを重視するのかによって、選択が変わります。処理量や不純物濃度が高い場合は、カートリッジ交換頻度が高くなり、カートリッジ式ろ過のランニングコストが大幅に上昇する可能性があるため注意が必要です。
  5. メンテナンスの手間と頻度: 定期的な逆洗作業が許容できるか、あるいはカートリッジ交換の手軽さを優先するか、運用体制に合わせて検討します。
  6. 排出される排水の処理: 砂ろ過では逆洗排水が発生するため、その処理方法も考慮に入れる必要があります。カートリッジ式ろ過では使用済みカートリッジの廃棄が必要です。

まとめ

ろ過器の選定は、水処理システムの性能とコストに大きく影響する重要なプロセスです。「砂ろ過」は大規模処理やコスト効率に優れ、安定した水質供給が可能です。「カートリッジ式ろ過」は省スペースで高いろ過精度を実現し、メンテナンスも容易です。それぞれの特徴を理解し、自社の水処理ニーズに合致したろ過器を選ぶことが、効率的で持続可能な水処理を実現する鍵となります。


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