pH計(pH測定器)とは?原理や種類、正しい選び方・使い方を徹底解説 水処理

目次
pH計(pH測定器)とは、水溶液が酸性・中性・アルカリ性のどの状態にあるかを数値で把握するための測定器のことです。 水処理設備や各種プラントの品質管理・工程管理において、欠かせない計測機器だといえます。 この記事では、pH計の基本的な測定原理から種類ごとの特徴、設備設計や現場選定に役立つ選び方・正しい使い方まで、わかりやすく解説いたします。
pHとは?
pHとは、水溶液の酸性・アルカリ性の程度を表す指標で、0~14の数値で表します。
酸性とアルカリ性の基準
一般的には、pH7付近を中性とし、それより小さい値を酸性、大きい値をアルカリ性とします。
- pH7:中性
- pH7未満:酸性
- pH7超:アルカリ性
ただし、pHは単純に「酸やアルカリの量」を直接表示している数値ではなく、水溶液中の水素イオンの濃度(状態)に関係する指標です。
設備設計の実務では、まず「対象液をどのpH範囲で管理する必要があるのか」を明確にした上で、その条件に適したpH計や電極を選定することが大切です。
身近な液体のpH例
pHをイメージするには、身近な液体と比較すると理解しやすくなります。
たとえばレモン汁は酸性側、石けん水はアルカリ性側にあります。
純水は理想的な条件では中性付近ですが、実際には空気中の二酸化炭素を吸収することなどによってpHが変化します。
水道水についても必ずpH7になるわけではありません。
日本の水道水の水質基準では、pH値は5.8以上8.6以下とされています。
そのため、「水だからpH7」と決めつけず、実際の液体を適切な方法で測定することが重要です。
酸性とアルカリ性の化学的特徴や性質の違い
酸性・アルカリ性の違いは、設備の材質選定や薬品処理にも関係します。
強い酸性・アルカリ性の液体を扱う設備では、配管やタンク、ポンプ、シール材、センサーなどへの影響を考える必要があります。
特にpH計では、測定対象に接触する電極部分が重要です。
測定範囲だけを見て機種を決めるのではなく、液体の成分、温度、固形物、薬品の種類なども含めて検討する必要があります。
pHを計測する目的と主な利用シーン
pHを計測する目的を、主な利用シーン別にご紹介します。
水処理・インフラ(浄水場・下水処理場・工場排水管理)における役割
公共の水処理施設や工場の排水処理ラインでは、放流基準の順守と環境保全を目的としてpH計測を実施しています。
水質汚濁防止法などの法令に基づき、排水のpHは一定範囲内(一般公害防止では概ね5.8~8.6)に収める義務があります。
適切な中和処理を行わずに酸やアルカリを排出すると、河川生態系へ大きな損害を与えるだけでなく、排水配管や処理施設の構造物を損傷させるリスクが生じます。
農業・水産(土壌pH管理、養殖漁場の水質管理)における役割
農業分野では、土壌のpH状態が作物の養分吸収率に大きな影響を与えます。
土壌が過度に酸性化すると植物の生育に必要なリン酸などの主成分が不溶化して吸収できなくなるほか、アルミニウムなどが溶け出して育成不良を引き起こすため、石灰等の投入による適切なpH調整が必要です。
水産養殖分野においても、飼育水のpH変化は魚介類の生命活動やエラ呼吸に直結します。
また、pHの上昇は飼育水中のアンモニア毒性を高める要因にもなるため、適切なpH領域を維持することで、大量死などを回避します。
産業・その他(食品開発・品質管理、医療現場、印刷業界)での活用例
食品・飲料製造では、味の安定性や保存性の向上、発酵工程の制御にpH計測が欠かせません。
医薬品・化粧品の製造工程においても、有効成分の分解防止や皮膚への安全性を考慮して厳密な管理が求められます。
印刷工程では湿し水のpH管理が発色や乾燥速度を左右するなど、あらゆるものづくり現場の品質管理で活用されています。
pH計とは?測定原理と仕組み
ここでは、pH計の測定原理と仕組みについて解説します。
主流である「ガラス電極法」の測定原理
現在、工業分野や研究用途で最も広く普及している測定方式が「ガラス電極法」です。
JIS規格(日本産業規格)でも採用されている、信頼性の高い測定方法です。
ガラス電極と比較電極(参照電極)の2本を用いる仕組み
ガラス電極法では、水素イオンに反応する特殊なガラス膜を備えた「ガラス電極」と、液体のpHに関わらず常に一定の電位を保つ「比較電極(参照電極)」の2本を水溶液に浸して測定を行います。
近年は、これら2本の電極と温度センサーを1本の棒状にまとめた複合電極が一般化しています。
2溶液間の電位差(電圧)を測定するメカニズム
ガラス電極の先端にある薄いガラス膜の内側には、あらかじめ一定pHの内部液が入っています。
この電極を測定液に浸すと、ガラス膜の薄膜を隔てて内側の液と外側の測定液との間に水素イオン濃度の差が生じます。
この濃度差に応じた起電力(電位差)が発生する仕組みです。
変化しない比較電極の電位を基準として、両電極間の電位差をボルト(mV)単位で測定することでpHを決定します。
25℃における「pHが1変化=約59mVの起電力発生」という数値原理
ガラス電極法における起電力とpHの関係は、ネルンストの式と呼ばれる理論式に基づいています。
液温が25℃の環境下では、pHが「1」変化するごとに、約59.16mVの電位差が発生します。
つまり、pH7(中性)の時に0mVとなるよう設定しておけば、起電力が+59mV変化した場合はpH6(酸性側)、-59mV変化した場合はpH8(アルカリ性側)であると算出できます。
pH計を構成する各部の名称と役割
pH計は主に「検出部(センサー)」「指示部(メーター)」「標準液」で構成されています。
ここでは、各部の名称と役割について解説します。
検出部(センサー)
- 役割: 水溶液に直接触れてpHに応じた電気信号(電位差)を検出する。
- ガラス電極: 先端にコンマ数ミリの薄いガラス応答膜を持つ繊細な構造。
- 比較電極: 内部に電位が極めて安定した塩化カリウム(KCl)水溶液を充填。
- 液絡部(えきらくぶ): 小さな孔から内部液が微量に染み出て電気回路を形成。
指示部(メーター)
- 役割: 微小な電位差信号をノイズなく受け取り、増幅・演算してpH値としてデジタル表示。
- 技術的特徴: ガラス膜の内部抵抗(出力インピーダンス)が100MΩ以上と極めて高い。
- 必要性: 信号の減衰やノイズを防ぐため、メーター側には高い入力インピーダンスを備えた高精度な電子回路が必須。
標準液
- 目的: 汚れや経時変化、温度による測定値のズレ(不斉電位など)を定期的に校正(調整)。
- 性質: 外部からの影響を受けてもpH値が変化しにくい「緩衝液」を使用。
- 代表例(25℃環境下):
- pH4.01(フタル酸塩標準液)
- pH6.86(中性りん酸塩標準液)
- pH9.18(ほう酸塩標準液)
- pH10.02(炭酸塩標準液)
温度補償(ATC)の重要性
pH測定では、温度補償(ATC)が重要です。
液温による電位差の変化と測定値への影響
先述の通り、ガラス電極で発生する起電力は、液温の影響を受けます。
同じpH差であっても、温度が変化すると1pHあたりの電位差、すなわち電極の理論感度が変化します。
たとえば理想的なガラス電極では、0℃で約54.20mV/pH、25℃で約59.16mV/pH、60℃では約66.1mV/pHとなります。
そのため、温度による電極感度の変化を補正せずに測定すると、pH値に誤差が生じる可能性があります。
自動温度補償(ATC)機能が必要な理由
この温度によって変化するガラス電極の起電力特性(感度)を、自動的に補正する機能が「自動温度補償(ATC:Automatic Temperature Compensation)」です。
ATC対応のpH計では、電極に内蔵された温度センサーや別置きの温度センサーで液温を測定し、その温度に応じたガラス電極の感度(起電力勾配)を自動的に補正してpH値を算出します。
そのため、校正時と測定時で液温が異なる場合や、液温が変化しやすい現場では、ATC機能を備えたpH計を選ぶと精度の高い測定を行いやすくなります。
ただし、ATCは試料そのもののpHを25℃時の値へ換算する機能ではない点に注意が必要です。
測定時の標準的な基準温度(25℃)について
pHは温度によって変化するため、高精度な測定では液温の管理も重要です。
JIS Z 8802では、pH標準液について温度ごとのpH値が定められており、25℃はその代表的な温度条件の一つとして用いられています。
ATC(自動温度補償)によってガラス電極の起電力特性の温度変化は補正できますが、水溶液そのもののpHが温度によって変化する性質までは補正できません。
そのため、より高い再現性や精度が求められる測定では、標準液とサンプルの液温を揃え、一定温度に安定させて測定することが重要です。
25℃を基準として比較する場合には、恒温槽などを用いて25℃付近に温度管理して測定する方法があります。
pH計の種類とそれぞれの特徴・使い分け
pH計の種類とそれぞれの特徴・使い分けを表にまとめました。
| タイプ | 主な特徴 | 最適な用途 |
|---|---|---|
| コンパクト(ペン)型 | 一体型で体温計サイズ。軽量・安価だが耐久性や連続測定には不向き。 |
・屋内での簡易検査 ・排水サンプルのスポット確認 ・現場への持ち歩き |
| ハンディ(携帯)型 | 本体とセンサーが独立。堅牢性・防水性が高く、現場でのタフな測定に対応。 |
・工場排水の定期サンプリング調査 ・河川やピット(水たまり)の現場測定 |
| 据置型、組込型、オンライン連続測定型 | 制御盤への組み込みや24時間連続監視が可能。薬注装置や中和装置と連動。 |
・工場排水処理施設の自動管理 ・薬液ピットの中和制御 ・生産プロセスのインライン測定 |
それぞれ、以下で詳しくご紹介します。
コンパクト(ペン)タイプ
コンパクト(ペン)タイプの特徴をご紹介します。
片手で扱える利便性と屋内簡易検査への適性
コンパクト(ペン)タイプのpH計は、センサーと表示部が一体化した小型の測定器です。
携帯しやすい形状の製品が多く、比較的、簡単な操作でpHを測定できます。
持ち運びやすく、少量の試料や現場でのスポット測定、日常的な水質チェックなどに適しているのが特徴です。
また、機種によっては「フラットセンサー」を採用しており、水槽に直接浸けるだけでなく、わずか数滴のサンプル(液滴)を電極に落とすだけで測定できる利便性も備えています。
非防水モデルにおける水没リスクと注意点
コンパクトタイプは持ち運びやすい一方、製品によって防水・防じん性能が異なります。
水処理設備や水槽の周辺では、誤って本体を水没させたり、水分が内部へ浸入したりすると故障の原因となる可能性があります。
そのため、水濡れが想定される現場で使用する場合は、IP67など必要な保護等級を備えた機種を選定すると安心です。
ただし、IP67などの表示があっても使用可能な条件は製品ごとに異なるため、メーカーが指定する使用環境や取扱方法を事前に確認しましょう。
ハンディ(携帯)タイプ
ハンディ(携帯)タイプの特徴をご紹介します。
工場排水サンプリングや現場巡回時における耐久性と操作性
ハンディタイプは、指示部本体とケーブルで接続されたセンサー電極を持ち運んで使用する、携帯型のpH計です。
防水・防じん性能など、現場での使用を考慮した機種もあり、工場内の排水ピットを巡回して測定する場合や、屋外で採取した試料をその場で測定する場合などに適しています。
現場で使用する機種を選定する際は、防水・防じん性能に加えて、画面の見やすさや本体の持ちやすさ、作業手袋を着用した状態でのボタン操作のしやすさなども確認すると良いでしょう。
近年では、断線リスクを無くし、より自由な取り回しを可能にした「ワイヤレス(通信型)電極」を採用したモデルも登場しています。
土壌測定等に使われる棒状(突き刺し型)センサーも
ハンディタイプのpH計には、測定対象に応じて電極を交換できる機種があります。
一般的な水溶液用の電極だけでなく、粘性のある試料に対応した電極や、食品・半固体試料などに挿入して測定できる突き刺し形・針状の電極など、用途に合わせたさまざまなタイプがあります。
測定対象の性状に適した電極を組み合わせられるため、幅広い用途に対応しやすい点が特徴です。
ただし、接続できる電極の種類は機種によって異なるため、選定時には本体と電極の適合性を確認する必要があります。
据置型・オンライン連続測定タイプ
据置型・オンライン連続測定タイプの特徴をご紹介します。
【工場排水・設備管理の本命】24時間連続監視と自動制御を可能にする工業用システム
据置型(工業用)測定器は、水処理設備やプラント工程に組み込み、24時間体制でpHを連続測定・監視・制御するのに活用されています。
電極ホルダを介して配管ラインや反応槽に電極を常設するため、日常の測定作業を大幅に省力化できます。
測定データは連続的に更新され、プロセスの状態を継続的に把握できるほか、その値をもとに薬注ポンプや電磁弁を自動制御することも可能です。
中和処理におけるオーバーフィード防止
工場排水処理の中和工程では、酸性・アルカリ性の排水に中和剤を注入し、pHを管理範囲内に調整します。
pH計で排水の状態を連続的に監視し、その測定値をもとに薬注ポンプのON/OFFや注入量を自動制御するシステムを構築することも可能です。
適切に制御することで、中和剤の過剰注入やpHのオーバーシュートを抑え、薬品使用量の適正化や安定した排水処理につなげられます。
ただし、中和制御では薬品を注入してからpH計が変化を検出するまでに時間差が生じるため、槽容量や撹拌状態、薬注点とセンサーの位置、流入量などを考慮して制御系を設計することが重要です。
現場の制御盤への組み込み
工業用のpH指示計・変換器には、プラントの制御盤へ組み込むパネルマウント型や、現場の壁面などへ設置できる現場設置型タイプがあります。
機種によっては視認性を考慮した大型表示やバックライトなどを備え、現場でpH値を確認しやすい設計となっています。
また、4-20mAなどの伝送出力や警報接点、通信機能を備えた機種では、PLCや中央監視システムと連携して測定値を集中監視することも可能です。
選定時には、外形寸法やパネルカット寸法、取付方法、必要な入出力仕様を確認することが重要です。
防水・屋外仕様の重要性
屋外の水処理設備や、水しぶき・湿気の影響を受ける場所へ設置する場合は、設置環境に応じた防塵・防水性能(IP65~IP67等)を備えた機器を選定することが重要です。
たとえばIP65などの保護等級を持つ機種がありますが、必要なIP等級は設置条件によって異なります。
また、屋外では防塵・防水性能だけでなく、直射日光や温度変化、結露、薬品ミストなどの影響も考慮する必要があります。
使用環境に適したケース構造や仕様を持つ機器を選ぶことで、長期運用時の故障やトラブルの低減につながります。
特に屋外設置では、指示計本体だけでなく、ケーブル引込部やコネクター、端子箱などを含めた設備全体の防水・防湿対策を確認することが大切です。
2点警報や伝送出力(4-20mA)による遠隔監視
据置型の工業用pH指示計・変換器には、外部機器との連携に必要な入出力機能を備えた機種があります。
たとえば、pH値が設定した上限・下限を超えた際に接点信号を出力する警報機能や、測定値を外部へ伝送するDC 4-20mA出力、RS-485などの通信機能です。
これらを利用して外部の警報ブザーや表示灯を作動させたり、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)や中央監視システムへpH測定値を送信したりすることで、遠隔監視や設備の自動制御システムを構築できます。
ただし、対応する出力点数や信号方式、通信プロトコルなどは機種によって異なるため、選定時には仕様を確認することが重要です。
工場排水・設備管理で失敗しないための「ハンディ型」と「据置型」の使い分け
工場排水・設備管理でpH計を導入する際に失敗しないために、「ハンディ型」と「据置型」のどちらを選ぶべきか、用途に合わせてご紹介します。
サンプリング(スポット測定)ならハンディ型
毎日の定期巡回や特定工程でのスポットチェック、据置型pH計の表示値に異常が疑われる際の比較確認には、持ち運びやすいハンディ型が適しています。
必要な場所へ持ち運んで測定できるため、工場内の複数の測定ポイントを巡回して状態を確認する用途にも便利です。
また、据置型pH計とのクロスチェックにも活用できます。
ただし、両者の測定値を比較する際は、電極の種類や校正状態、測定位置、液温などの測定条件をできるだけ揃えることが重要です。
常時監視・中和処理なら据置型(工業用)
工場排水のpHが短時間で変動する場合や、中和処理を自動化する場合には、据置型pH計による連続監視が有効です。
手動のサンプリング測定では測定時点以外の急激なpH変化を把握できない可能性がありますが、据置型で連続測定することで、異常を早期に検知しやすくなります。
また、測定値を薬注ポンプなどの制御に利用すれば、pHに応じた中和剤の注入制御も可能です。
排水基準の安定した遵守を図るためには、法令や条例、排水の変動特性、設備の運転条件などを踏まえ、適切な監視・制御方法を選定することが重要です。
目的合わせた選定がコンプライアンス遵守の鍵
pH計を選定する際は、単に「pH値を測定する」という目的だけでなく、測定したデータをどのように監視し、記録や設備制御に活用するのかまで考えることが重要です。
現場での表示確認、異常時の警報、PLCへのデータ伝送、薬注設備との連動など、運用方法を明確にした上で必要な機能を整理することで、用途に適した機種を選定しやすくなります。
失敗しないpH計の選び方のポイント
失敗しないpH計の選び方のポイントを整理してご紹介します。
測定範囲・精度・分解能の確認
まずは、測定範囲・精度・分解能を確認しましょう。
対象液(通常排水か強酸・強アルカリか)に応じた測定レンジ(pH0~14など)の選択
多くのpH計ではpH0~14程度の測定範囲が設定されていますが、測定液の性質によっては一般的な電極では正しく測定できないケースがあります。強酸・強アルカリなどの特殊な条件では、使用する電極の仕様に注意が必要です。
強アルカリ領域では、ガラス電極がナトリウムイオンなどの影響を受け実際の値より低くでる「アルカリ誤差」を生じることがあり、非常に強い酸性領域では実際の値より高くでる「酸誤差」と呼ばれる測定誤差が生じる場合があります。
そのため、一般的な工場排水を測定するのか、強酸・強アルカリを扱う薬液工程で使用するのかを明確にし、測定範囲だけでなく、電極の使用可能pH範囲や耐薬品性、使用温度などの仕様を確認することが重要です。
法規制や管理基準に応じた、必要な『測定精度』と『表示分解能』の選び方
pH計を選定する際は、用途に応じて「測定精度」と「表示分解能」を確認することが重要です。
表示分解能には0.1pHや0.01pHなどがありますが、表示できる最小桁と測定精度は同じではありません。
たとえば0.01pH単位で表示できる機器でも、その桁まで測定精度が保証されているとは限らないため、仕様書で精度を個別に確認する必要があります。
※「0.01pHまで表示されるのに、精度は±0.05pH」という機種もあるため、必ず仕様書の「計器精度」を確認します。
また、排水管理では法令・条例や社内管理基準、管理値までの余裕などを踏まえて必要な精度を決めます。
一方、微細なpH変化を管理する工程では、0.01pH単位の表示分解能を持つ機器など、より高精度な測定に対応した機種を検討します。
選定の目安:
- 一般的な排水管理:法令・条例の規制値に対して余裕を持った精度(例:分解能 0.1pH、精度 ±0.1pH など)
- 微細な変化を追う工程管理:高精度な測定に対応した機種(例:分解能 0.01pH、精度 ±0.01〜0.02pH)
測定対象・環境に合った電極の選定
次に、測定対象・環境に合った電極を選定します。
油分、スラッジ(固形物)、高温排水、強酸・フッ酸等の特殊環境下におけるトラブル
一般的なpH電極を特殊な液体や厳しい条件で使用すると、電極の劣化が早まったり、正確に測定できなくなったりする場合があります。
たとえば、油分やスラッジなどを多く含む液体では、ガラス応答膜が汚れたり、比較電極の液絡部が詰まったりすることで、応答の遅れや測定値のドリフト、不安定化などが生じる可能性があります。
また、高温の液体では電極の劣化が促進される場合があるため、使用可能温度を確認する必要があります。
さらに、フッ化水素酸(フッ酸)はガラスを侵す性質があるため、フッ酸を含む試料では濃度やpHなどの条件を確認し、必要に応じて専用電極を選定することが重要です。
環境に合わせた専用電極(耐薬品、耐熱、非補給型カートリッジ等)の選定重要性
トラブルを抑えるためには、測定対象や使用環境に適した電極を選定することが重要です。たとえば、次のような点を確認します。
- 油分・浮遊物が多い液…開放型やスリーブ型など、液絡部が詰まりにくい構造の電極
- 高温の液体…測定液の温度に対応した耐熱用(高温用)電極
- フッ酸を含む液体…フッ化物濃度やpH、温度などの使用条件に対応した耐フッ酸専用電極
- 内部液の補充作業を減らしたい場合…ゲルタイプなどの内部液非補充型電極
pH電極は、測定範囲だけでなく、液絡部の構造、使用可能温度、耐薬品性、内部液の補充方式なども確認することが重要です。
測定対象や設置環境に適した電極を選定することで、液絡部の詰まりや電極の早期劣化、測定値の不安定化といったトラブルの低減につながります。
メンテナンス性とランニングコスト
最後に、メンテナンス性やランニングコストを検討しましょう。
消耗品としてのガラス電極の寿命(約6ヵ月から1年)
pH計の検出部(電極)は半永久的に使えるものではなく、使用に伴って劣化する消耗品です。
使用環境や頻度によって変動しますが、工業用や日常測定における電極の寿命目安は概ね約6ヵ月から1年程度です。
応答速度の低下や校正エラーが頻発するようになったら、寿命のサインです。
電極交換コスト、手入れのしやすさの考慮
pH計を選定する際は、本体の購入価格だけでなく、導入後のランニングコストまで考慮することが重要です。
pH電極の交換費用に加え、電極の種類によっては補充用内部液が必要となり、校正用標準液や保存液、洗浄液などの消耗品にも費用がかかります。
また、定期的な校正や電極の洗浄・点検、交換に必要な作業工数も無視できません。
据置型では、電極を取り外しやすい構造になっているか、設置したまま洗浄・校正できるかなど、保守作業のしやすさも確認しておきましょう。
機器選定では、こうした消耗品費とメンテナンスの手間を含め、導入後の維持管理コストを総合的に比較することが重要です。
購入前の現場テストの重要性
カタログ上の仕様では使用可能に見えても、実際の現場液の組成や温度、油分・スラッジなどの影響によって、電極の応答が不安定になったり、汚れや劣化が早まったりする場合があります。
そのため、特殊な排水や薬液を測定する場合は、液組成や使用条件をメーカーへ伝えて電極の適合性を確認することが重要です。
可能であれば、導入前に実液を用いたテストを行い、応答速度や測定値の安定性、電極への汚れの付着傾向などを確認すると、機種選定時のリスク低減につながります。
pH計の正しい使い方と測定のコツ
つづいて、pH計の正しい使い方と測定のコツについて解説します。
測定前の準備と電極チェック
測定前に、次のような準備を行いましょう。
ガラス膜の油分・ゴミの付着確認と洗浄
測定を開始する前に、電極の状態を目視で確認します。
先端のガラス応答膜や液絡部に、ゴミ、スケール、油分などの汚れが付着していないかチェックしましょう。
軽い汚れであれば純水や蒸留水などですすぎ、油分やスケールなどが付着している場合は、電極の取扱説明書に従って適切な方法で洗浄します。
なお、ガラス応答膜は傷つきやすいため、ブラシなどでこすって拭くことは避けます。
水滴を除去する場合も、柔らかい紙を軽く当てて吸い取るなど、ガラス膜に強い力を加えないよう注意してください。
内部液の気泡除去手順
比較電極の内部液に気泡が入り、液絡部付近で内部液の電気的な導通を妨げると、測定値が不安定になったり、応答が悪くなったりする場合があります。
そのため、使用前には内部液の状態を確認し、気泡が見られる場合は、電極の取扱説明書に従って除去してください。
製品によっては、電極を軽く振るなどの方法で内部の気泡を移動させる手順が指定されています。
ただし、ガラス電極は衝撃に弱いため、強く振ったり、周囲の物にぶつけたりしないよう注意しましょう。
電極の乾燥状態のチェック
pH電極のガラス応答膜は、表面に形成される「水和層」がpH応答に重要な役割を果たします。
長期間乾燥した電極では、この状態が損なわれ、応答が遅くなったり測定値が安定しにくくなったりすることがあります。
その場合は、測定前に電極を適切な溶液へ一定時間浸漬し、コンディショニングを行いましょう。
ただし、使用する溶液や浸漬時間は、内部液補充型・非補充型など電極の構造や製品によって異なるため、必ずメーカーの取扱説明書に従ってください。
コンディショニング後は校正を行い、正常に測定できることを確認してから使用します。
測定時の注意点
測定時は、次の3点に注意しましょう。
激しい撹拌による気泡発生の防止、サンプルの優しいなじませ方
サンプリングした液を測定する際、激しく撹拌すると気泡が発生し、ガラス応答膜や液絡部に付着することがあります。
気泡によって電極と試料液との正常な接触が妨げられると、測定値が不安定になる原因となるため注意が必要です。
電極は試料液へ静かに浸し、気泡が付着した場合は電極を軽く動かすなどして取り除きます。
その後、電極を試料へ十分になじませ、測定値が安定してから読み取ります。
なお、撹拌の有無や方法については、使用するpH計・電極の取扱説明書に従ってください。
数値が完全に安定するまで待つ重要性
電極を試料液へ浸した直後は、ガラス電極の応答が安定するまで表示値が変化します。
そのため、浸漬直後の数値を読み取るのではなく、表示値が十分に安定してから測定結果を記録することが重要です。
安定判定機能を備えたpH計では、安定マークなどの表示を目安にしましょう。
ただし、安定判定の方法や条件は機種によって異なるため、取扱説明書に従ってください。表示値が安定する前に読み取ると、正確な測定結果が得られない原因となります。
以前より安定するまでの時間が著しく長くなったという場合は、ガラス応答膜の汚れや液絡部の詰まり、電極の劣化なども確認しましょう。
温度センサーの追従タイムラグと、液温変化によるpH値自体の変動への注意
自動温度補償(ATC)機能を備えたpH計でも、温度センサーが試料の液温に追従するまでには一定の時間がかかります。
また、ATCによってガラス電極の感度の温度変化は補償できますが、試料そのもののpH値も温度によって変化するため注意が必要です。
特に、温度の異なる試料を連続して測定する場合は、pH電極と温度センサーを試料へ十分になじませ、温度とpHの表示が安定してから測定値を記録しましょう。
再現性を重視する場合は、標準液と試料の温度条件をできるだけ揃え、一定の温度条件で校正・測定することも重要です。
使用後の適切な保管方法
pH計を使用した後は、下記のポイントに沿って適切に保管する必要があります。
使用後の純水等による洗浄手順
測定後は、電極に付着した試料をそのまま放置せず、適切に洗浄することが重要です。
試料が付着したまま乾燥すると、成分が析出したり汚れの固着が起こり、ガラス応答膜の応答低下や液絡部の詰まりにつながる場合があります。
使用後は、純水や蒸留水などで電極を十分にすすぎ、付着した試料を洗い流してください。
油分やタンパク質、スケールなど、水だけでは除去しにくい汚れがある場合は、電極の取扱説明書に従って適切な洗浄液を使用します。
専用の「保存液(塩化カリウム溶液など)」を用いた乾燥防止対策
pH電極を保管する際は、ガラス応答膜や液絡部を乾燥させないことが重要です。
測定後は電極を適切に洗浄し、メーカーが指定する専用保存液や塩化カリウム(KCl)溶液などを使用して、電極先端を適切な湿潤状態に保ちましょう。
保存液の種類や濃度、保護キャップの使用方法は電極によって異なるため、必ず取扱説明書に従って保管してください。
純水中に浸したまま長期保管してはいけない理由(応答膜の劣化や液絡部からの内部液流出防止)
乾燥を防ぐ目的であっても、pH電極を純水や蒸留水に長時間浸したまま保管することは避けましょう。
純水中で長期間保管すると、比較電極の内部液に含まれる塩化カリウム(KCl)が液絡部を通じて流出・拡散したり、内部液が希釈されたりすることで、電極性能の低下につながる場合があります。
保管時は純水ではなく、メーカーが指定する専用保存液やKCl溶液などを使用してください。
精度を保つためのメンテナンスと校正(キャリブレーション)
pH計の精度を保つためには、メンテナンスと校正(キャリブレーション)が重要です。
定期的な「校正」が必要な理由と適切な頻度
なぜ、定期的に校正する必要があるのでしょうか?
校正には、適切な頻度があるのです。
経年変化・ドリフトによる数値のズレと校正(キャリブレーション)の不可欠性
pH電極は、使用や経時変化によってガラス応答膜や液絡部などの状態が変化し、ゼロ点(非対称電位)や感度(スロープ)が徐々に変化することがあります。
そのため、正確な測定を維持するには、pH値が既知の標準液を用いて定期的に「校正(キャリブレーション)」を行うことが重要です。
校正では、標準液を測定して電極のゼロ点や感度のずれを確認し、その校正値をもとにpH計が測定値を補正します。
使用頻度に応じた校正目安
pH計の校正頻度は、使用頻度や要求精度、測定対象、電極の状態などによって異なります。
高い精度が求められる測定では、毎日の作業開始前や測定前に校正するなど、より短い間隔で実施します。
また、長期間使用していなかった場合や電極を交換した場合、洗浄・メンテナンス後、測定値に異常が疑われる場合にも校正を行いましょう。
具体的な校正頻度は、使用するpH計・電極メーカーの取扱説明書や、測定業務に適用される規格・社内管理基準に従って設定することが大切です。
測定レンジに応じた「1点校正」「2点校正(pH7とpH4/pH10)」の使い分け
pH計の校正には、1種類の標準液を使用する「1点校正」と、異なるpHの2種類の標準液を使用する「2点校正」などがあります。
1点校正では主に電極のゼロ点(オフセット)を補正します。
一方、2点校正ではゼロ点に加えて電極感度(スロープ)も確認・補正できるため、より精度を重視する測定に適しています。
2点校正では、測定対象のpHを挟むように標準液を選ぶのが基本的な考え方です。
たとえば酸性側を測定する場合は、中性と酸性(pH7とpH4など)、アルカリ性側を測定する場合は、中性とアルカリ性(pH7とpH9又はpH10)の標準液を使用します。
具体的な標準液の組み合わせや校正手順は、使用するpH計の仕様やメーカーの取扱説明書に従ってください。
電極の洗浄方法と寿命を延ばすコツ
電極の寿命を左右する要素として、洗浄方法も影響します。
汚れに応じた適切な洗浄液の選択(油分:中性洗剤、無機スケール:希塩酸、タンパク質:酵素系洗浄液)
純水などですすぐだけでは除去できない汚れが付着した場合は、汚れの種類に適した方法で電極を洗浄します。
- 油分・有機物の汚れ…希釈した中性洗剤や、アルコールなどの有機溶媒(※電極の材質が耐えるものに限る)またはメーカーが指定する洗浄液を使用する
- 無機物・スケールなどの汚れ…メーカー指定の酸性洗浄液(希塩酸)や電極専用洗浄液を使用する
- タンパク質の付着…タンパク質除去用の酵素を含む専用洗浄液を使用する
洗浄液の種類や濃度、浸漬時間は電極によって異なるため、必ずメーカーの取扱説明書に従ってください。
洗浄後は純水や脱イオン水などで十分にすすぎ、必要に応じてコンディショニングや校正を行ってから測定に使用します。
気泡が消えない場合のアルカリ溶液浸漬プロセス
電極の内部液や液絡部付近に気泡が残っていると、測定値が不安定になったり、応答が遅くなったりする場合があります。
気泡が通常の方法で除去できない場合は、電極の種類に応じてメーカーが指定するコンディショニングや再生処理を行います。
処理方法や使用する溶液、温度、浸漬時間は電極によって異なるため、自己判断で加温したり薬液へ浸漬したりせず、必ず取扱説明書やメーカーの指示に従ってください。
よくあるトラブルの原因と対処法
最後に、pH計に起きがちなトラブルの原因と対処法をご紹介します。
「数値が安定しない」「校正エラーが出る」等の代表的不具合の原因究明
数値がふらつく場合には、
- ガラス膜の汚れ・乾燥:適切な液(専用洗浄液や純水)で洗浄し、保存液でコンディショニングを行います。
- 液絡部の詰まり・内部液の減少:液絡部が汚れていないか、内部液が規定量入っているか(補充型の場合)を確認します。
- 気泡の付着:電極先端や内部に気泡がないか確認し、あれば優しく振って除去します。
- 温度が安定していない:試料と電極の温度が同等になり、表示が安定するまで待ちます。
- 電極の劣化:電極を適切に洗浄し、新しい標準液を用いて正しい手順で校正を行っても、感度(スロープ)やゼロ点(非対称電位)がメーカーの規定範囲内に収まらない場合は、電極の寿命と考えられます。
ガラス応答膜の摩耗だけでなく、液絡部の深刻な汚染や、比較電極の劣化が進んでいるサインです。メーカー指定のコンディショニングを行っても正常に校正できない場合は、速やかに電極を交換してください。
※スロープやゼロ点の許容範囲(例:感度90%以下など)は機種によって異なるため、必ず取扱説明書の判定基準に従ってください。 - 電気的ノイズ:工業用の測定現場では、周辺のモーター、インバーター、動力配線などから発生する電気的ノイズの影響を受け、pH計の指示値が激しくふらつく場合があります。
ノイズトラブルが疑われる場合は、以下の施工・対策が正しく行われているか確認してください。
など複数の原因が考えられます。
まず洗浄、校正、電極状態、温度条件など基本項目から順番に確認すると原因を絞り込みやすくなります。
トラブルが改善しない場合を「電極の寿命(交換サイン)」とする判断基準
電極を適切に洗浄し、新しい標準液を用いて正しい手順で校正しても、感度(スロープ)やゼロ点(不斉電位)がメーカーの規定範囲に入らない場合は、電極が劣化している可能性があります。
ガラス応答膜の劣化だけでなく、液絡部の詰まりや汚染、内部液や比較電極の状態なども確認しましょう。
メーカーが指定する洗浄やコンディショニングを行っても正常な校正ができない場合は、電極の交換を検討します。
なお、スロープやゼロ点の許容範囲は機種によって異なるため、取扱説明書に記載された判定基準に従ってください。
電気的ノイズによるトラブル
工業用の現場では、モーターやインバーター、動力配線などから発生する電気的ノイズの影響を受け、pH計の指示値が不安定になる場合があります。
・ ガラス応答膜の汚れ・乾燥: 適切な液(専用洗浄液や純水)で洗浄し、保存液でコンディショニングを行います。
・ 液絡部の詰まり・内部液の減少: 液絡部が汚れていないか、内部液が規定量入っているか(補充型の場合)を確認します。
・ 気泡の付着: 電極先端や内部に気泡がないか確認し、あれば優しく振って除去します。
・ 温度の未安定: 試料と電極の温度が同等になり、表示が安定するまで待ちます。
・ 電気的ノイズ: 周辺機器(モーター等)の稼働状況を確認し、原因を切り分けます。
こうしたトラブルを防ぐには、信号線と動力線を適切に離して配線するほか、シールドや接地をメーカー指定の方法で施工することが重要です。
必要に応じてノイズフィルターなどの対策も検討します。
ただし、指示値のふらつきは電極の汚れや液絡部の異常、気泡などによっても生じるため、原因を切り分けて対処する必要があります。
まとめ
pH計(pH測定器)は、水処理設備や生産プラントの安定運用、そして法令遵守において極めて重要な役割を果たす計測機器です。
測定原理であるガラス電極法の仕組みを正しく理解し、現場の測定環境や目的に適合したタイプ(ハンディ型・据置型など)や専用電極を選定することが、測定トラブルを防ぐ第一歩となります。
また、精密機器であるpH計の性能を維持するためには、日頃の適切な洗浄・保管と、定期的な標準液による校正メンテナンスが欠かせません。
本記事で解説した選定ポイントや正しい取扱い方法を参考に、現場のpH管理によって安定運転とコンプライアンス(基準値逸脱防止)を実現してください。
セムコーポレーションでは、pH計・ORP計・導電率計をはじめとする各種水質測定器を取り扱っています。
pHの測定だけでなく、ポンプや撹拌機の制御、測定値の自動記録、伝送出力などに対応する機種も用意されているため、水処理設備の用途や運用方法に応じて検討いただけます。












