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ベテラン加藤の中和装置開発日記 ~「制御機能付pH計/ORP計」開発秘話~ 表面処理 その他

pH計/ORP計といえば、導入に際して制御回路を作るのがあたりまえ――

そんな常識を覆したのが、セムコーポレーションの制御機能付pH計/ORP計「PET-M3(ペット・エムスリー)」です。 2001年の発売から18年間で累計5,000台以上を売り上げ、いまなお販売台数を伸ばしています。

業界初となる屋外型制御機能付pH計/ORP計がどのように生まれ、改良されてきたのかを、当時を知る、おなじみのベテラン加藤さんにインタビューしました。

加藤

セムコーポレーション 開発部部長: 
加藤

56歳 セムコーポレーションでは古株TOP3に入る。
おっとりしていて、みようによってはぼーっとしているようにも見えるが実はかなりのアイディアマン。 社内でもまだまだ頼られる現役部長。

常識破り!「制御盤」と「pH計/ORP計」の一体化

制御機能付きpH計/ORP計 PET-M3

制御機能付きpH計/ORP計 PET-M3



— 制御盤とpH計/ORP計が一体型の製品は、中和装置製造業界で初めてだったそうですが、どんなきっかけで生まれた製品なのですか?

前回の開発秘話で紹介した「超高効率小型撹拌機 TCM」と同じように、社長の発案だったんだ。うちの社長はひらめき型で、ものづくりが大好き。
制御機能付pH計/ORP計も、朝目が覚めてすぐに思い浮かんだそうだよ。



— 開発期間はどのくらいだったのですか?

だいたい2年くらいかな。実際に開発を担当したのは、計測器を担当していた社員だったんだけど、営業担当から必要な機能をヒアリングして、試作品を10台くらい作って製品化したんだ。製品化後も、「夜になるとメーターが見えないんだけど」とお客様から指摘を受けて、バックライトを追加するなど改良を重ねて現在の仕様に落ち着いたんだよね。



— 試作品や製品の製造はすべて自社工場で?

そう、製品開発や製造は自社でやっているよ。

製品図面

制御盤1台よりも安い上に、コンパクトで機能もしっかり。次世代型中和装置を実現!

「PET-M3」がそれまでの常識を打ち破った点は2つあります。

1つは、従来の中和装置というと「測定装置 +制御盤」の2台構成でないと成り立たなかったものを、制御機能内蔵の測定装置にまとめてしまったこと。

2つ目は、価格。それまで制御盤がいくら安くても30万はするし、1件1件現場に合せた制御設計を行って装置を作成しなければいけないから、人でも納期もかかっていました。

それが、汎用品として中和装置の大概の機能を発揮し、制御装置の設計どころか盤そのものが測定装置の方に収納され、価格も制御盤単体と比較しても格安ということを実現してしまいました。

当時、画期的すぎるが故に、かえってお客様にはなかなか受け入れてもらえないというパラドックスが生まれてしまい、売るのに苦戦したようです。



— PET-M3は、実際にいくらで販売しているんですか?

定価で23万円(税抜)だよ。当時、制御盤だけで最低でも30万円以上したから、本当に安いよね。(本体だけの価格でpHセンサーなどは別です。)



— えっ!制御盤1台よりも低価格で制御機能とpH計/ORP計が導入できてしまうんですか?

そういうことになるね。



— それは、、お客さんは飛びついたでしょうね~。

いや、それが、「この測定装置(pH計/ORP計)だけで、本当に大丈夫なのか(制御までできるのか)?」と懸念されてしまって、当初はなかなか売れなかったんだよ。

営業担当からも「制御機能が内蔵されているということは、このpH計/ORP計が故障したらすべての機器が動かせなくなる。そんな製品は怖くて売れない」とお客様の不安に飲みこまれてしまって敬遠しちゃって…。



— 営業マンも売りたがらず、お客様にも受け入れてもらえないとは…苦しいスタートでしたね。

うん。うちの新製品はいつも出足が悪いんだよ。世のなかの常識を覆すものが多いからかな。



— いつも新しい商品ジャンルを切り開く開拓者のようです。

中和装置の既存ユーザーのリプレイスではなく、小型化、低価格化による新しい業界、用途での採用をコツコツと増やし、累計5,000台を突破!

すでに制御盤を使った中和装置を採用している既存ユーザーには「止まったら怖い」「従来通りの構造で満足」となかなか受け入れてもらえませんでした。

それでも採用してくれる企業が増えていくなかで気が付いたのは、「1台型でも2台構成でも、壊れたるときは壊れる」ということだったといいます。「1台にまとまったら壊れやすいのではないか?」という懸念は、現実に起こらないことがわかってきました。



— 本当に地味にコツコツと採用されるところに使ってもらって実績を作っていたんですね(笑)。
そこから、いつどうやって販売台数をグンと伸ばしたのですか?

うん、PET-M3を「制御機能付pH計/ORP計」として売り込むのはやめて、「小型中和装置」とか「pH自動管理機」といった切り口での提案を強化したんだ。すると、まず「小型中和装置」としての販売台数が伸び始めたんだよ。



— 小型中和装置といえば、セムコーポレーションの得意ジャンルですもんね。
これまでの導入業界に「次世代型中和装置」として採用されていったのですか?

新規用途で検討しているという問い合せをもらって、相談いただいたところと一緒に検証しながら、新しい業界や用途を開拓してきたんだ。 表面処理の薬品メーカーには、メッキ液のpH管理に採用されて、これまでに約1,000台納入してきたよ。



— 表面処理業界ではどうしてセムコーポレーションのpH管理装置を採用したのですか?

表面処理業界の現場は狭いため、大きな装置は置けないこともあって、制御機能内蔵のpH計と薬品注入ポンプの一体型で設備投資額が少なく済むということもあって採用されたんだ。



— ほかにも、これまでは導入したくてもできなかった業界にPET-M3が導入された例はありますか?

すぐ思いつくのは、あと2つほどかな。採用された1つはガスを処理する装置メーカーだよ。循環液をポンプで吸い込んで、ガスにシャワーを降らせて有害なガスを放出しないようにする装置があったけど、シャワー水となる循環液を予めpHの調整しておく必要があったんだ。そのpH値の測定・調整にPET-M3が後からでも簡単に取付が可能だという事で、採用されたんだ。



— もう1つは?

水産業でとある養殖に関わる商社さんから「散布する溶液の濃度管理がしたいのだが、良い製品がないか?」という相談。詳細を聞いてみると、その養殖現場では殺菌を目的にある薬品を海水で薄めたものを散布しているそうなんだけど、濃度の管理方法がなかったので各自の感覚で薄めていたそうなんだ。「食べ物を作っているのだから、必要最小限の散布にしたい」という声があったり、環境への影響が懸念されていたんだ。結果的に「PET-M3」の導入によって濃度管理ができるようになっただけでなくコンパクトだから船に積んでも邪魔にならないし価格もお手頃と、いいことづくめだったようだよ!

それから少しずつ、「低コストでコンパクト、納期も圧縮できる」というメリットが浸透して、「制御機能付pH計/ORP計」としても認知されるようになってきたと実感しているよ。

メーカーからは、自社製品への組み込み依頼やOEM依頼も

制御機能付pH計/ORP計「PET-M3」は、その機能やコンパクトさ、リーズナブルな価格が評価され、セムコーポレーションのオリジナル製品として単体で販売されるだけでなく、機械メーカーから自社製品への組み込み依頼やOEM製品としての提供も依頼されるまでになりました。

実は、さっき出たスクラバー業界に「スクラバーにPET-M3を組み込んで販売してくれないか?」と打診したことがあったんだけど、その時は「そんな売れるかわからないものは作れない」と断られたので、うちのオリジナル商品としてPET-M3を組み込んだスクラバーを作って販売を始めたんだよ。

小型スクラバー「セムクリーナー」

小型スクラバー「セムクリーナー」

そしたら、そのメーカーから「やっぱり、うちでも作りたいから卸してくれ」なんて頼まれたことがあったよ。競合他社からも「自社製品に組み込みたいから売ってくれないか」と打診されたことがあったな。



— 社長さんのアイディアと開発努力、営業努力の結集で、これまで導入していなかったところで水質管理が実現し、結果、環境にも優しくなるなんて、スゴイ素敵なお仕事をしている会社ですね!

そういうことになるかな。またもや自画自賛になっちゃうけどね(笑)。

これからもこのPET-M3で「pH管理、コントロールを自動でしたい」「廃液処理を適切に行いたい」けどやれていない新しい業界、用途の相談をもらって一人でも多くの人に喜んでもらえたら嬉しいね。

 

※登場する人物の名前や設定等は架空のものであり、実在のものと一部異なります。

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